綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

IDOL IS DEAD

[:W360]
ほとんど栗らしい栗を食べぬまま栗の美味しい季節が過ぎ去ってしまい、早々とおモチが食べたい季節となりました。

寝しなに何気なくA猪木の「勇気」という数十年前のエッセイ本を読んでいたら「自閉症の子と猪木が語り合う」というシーンがあって、でもその子供がどう見ても自閉症じゃなくて単なる引っ込み思案で、「ああ自閉症って本当に誤解を受けやすいネーミングだよな」としみじみ。まあ数十年前じゃ仕方ないか。

かくいう僕自身も非常に誤解を受けやすいタイプなので、横にいたガールズに「誤解というのは実に恐ろしい。パパちゃんもちょっと頭と心がアレなだけで、実はいい人なんだということをこれからは周りのきれいなお姉さんたちにきちんと伝えていこうと思う!」と高らかに宣言したのですが、「うんうん、そうだね、よかったね」とアンニャローiPhoneにつなげたイヤホンを外すこともなく受け流しやがった。クリスマスプレゼントにサンタさんからおもちゃもらっても貸してやらねえからな!( `д´)ケッ


ほどなくして母から久々の電話があり、「あー今日は何を怒られるのだろう」とビクビクしながら受話器を取ると「先週兄がこっそり死んでいたようだ」とのこと。「こっそり」ってなんだよ!せめて「ひっそり」だろ!と心の奥でツッコミつつも、僕はしばらく「え・・・あ、そう、うーん」とただ頷くばかりでした。

正直ほとんど会話もしたことがない伯父でしたから大した感慨も湧いてこなかったのですが、そうはいってもやはりごく近い親類ですから「これは葬儀にかこつけて1日くらい会社休めるッ!」と思ったら(←鬼畜)、葬儀も「こっそり」終わっていたそうです。だからせめて「ひっそり」って言えよ。


おいの僕はともかく実妹である母ですらその死を数日間知らなかったほどですから、僕の伯父も相当な変わり者でした。
僕が最後に会ったのもたぶん10年ほど前で、母の弟の葬儀でした。
ちなみにこの叔父も実に変わった方で、よく幼い僕を直管のサバンナRX3に乗っけて日本橋あたりの呉服屋問屋へ連れていってくれました。真っ赤なケンメリにも乗ってたな。

まあ下の叔父の話はともかく、上の伯父は変わり者というか僕に輪をかけたような人間嫌いで、とにかく昔から誰とも会おうとしませんでした。実の妹である母とも長らく連絡を取らなかったくらいですから確かなことはわからないのですが、身体が弱く、透析生活を長く続けながら生活保護を受けて暮らしていたと聞いた覚えがあります。

僕は昔から(たぶん子供のころから)「終末はきっと誰にも看取られることなく一人さびしく死んでいくのだ」と思っていたので、今回まさにそれをリアルに体現してみせた伯父には今更ながらシンパシーを感じてなりません。もうちょっと話しておけばよかったな。


伯父もきっと僕と同じように「もし誰も看取ってくれなかったら寂しいから先に一人ぼっちになっておこう。音信不通にさえなっていれば一人で死んでも仕方ない、誰も来てくれないのではない、誰も来ようがないのだ。これはもう仕方がない。決して誰にも愛されなかったわけではない、ただただ、仕方がないのだ。」という中ニ的発想だったに違いありません。

実際にどうであったかはともかく、誰かに支えられ、誰かに愛され、誰かに看取られる自分なんてとうてい想像できなかったのでしょう。

「寂しい終末」に思えるかもしれませんが、寂しい終末を回避した結果の終末なのだということを、少なくとも僕だけはわかってやろうと勝手に夢想しています。

まあでも兄妹の死を風の便りに聞くなんてやっぱりちょっと、ねえ。
忌引で会社休めないじゃんねえ。

合掌。

GachifloZ

追伸
天国ではおともだち出来るといいね。