綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

Easy Life

 

思えば楽しい人生でした。

好き放題やって、なんでもかんでもほったらかしで。
多くのものを受け取っておきながら何ひとつ生み出さず、何ひとつ次世代に残さない。
そんな情けない人生でした。


ここからはおまけの日々ですから、世間様になるべくご迷惑のかからないように黙っておとなしく一日一日を静かに過ごし、出来うることなら出来る限り迷惑を掛けないかたちでポックリ死にたいと願っています。


僕の父はある日突然余命3ヶ月と告知され、下の世話ひとつさせずきっちり3ヶ月後にポックリ逝ってしまいました。母は同じことのないようにしっかり定期診断を受けろと僕に口をすっぱくして言いますが、あんなふうにあっさりポックリ逝けるならそんな理想形は無いなあと思ったりもします。

 

こどもの頃から眠れない夜にいつも思い描いていたストーリーがあります。

「ベランダの向こうにUFOが降り立ち、そのまばゆい光を浴びた僕は目覚めると・・・」

足が20cm伸びてモテモテになったり。透明人間になって女子更衣室や銭湯を覗いたり。壁をすり抜ける能力を身につけて絶対見られないアイドルの私生活を眺めたり。170kmくらいの球を投げられる能力を身につけ東京ドームで華やかにデビューして億万長者のモテモテウハウハになったり。

まあそんなことをニヤニヤ考えているうちに眠っていたわけです。
まあまあバカですね。


でももうそんな妄想もできなくなってきました。
170kmの剛速球を投げられようが、針の穴を通すような正確無比の弾丸シュートを打てるようになろうが、妄想の中でグラウンドに足を踏み入れた自分の姿を描いた瞬間、「おじいちゃん鮮烈デビュー・・・無いわ」と涙があふれてきてしまうのです。


だからせめて大人しくしていようと思います。
若い人たちの邪魔をしないように。
皆の未来を妨害しないように。


出来うることなら誰にも認められず、かといってうとまれず、エイリアンが攻めてきたときレーザービームの射出口に特攻してひっそりと世界を守れるような、そんな存在になれたらいいのですが、まあ無理ですわね(笑)。

とりあえず怒らないようにしたいです。
そして皆がしあわせになるようお祈りしながら毎日静かにくらしたいです。

 

 

 

・・・と言いつつ毎日毎日仕事に追われドタバタドタバタ!
いったいあと何十年こんなふうにあくせく働かなければならないんだろう。

 


GachifloZ