綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

狙われた街(さらば新宿ミラノ座)

はじめて行った映画はたぶん「東映まんがまつり」か「東宝チャンピオンまつり」だと思うのですが、子が子なら親も親というか、その後なぜかマイパパパママが僕を連れて行ってくれたのは「日本沈没」などのパニックムービーや「神田川」だの「青春の門」だの「サード」だのATG系というのか青春の蹉跌的な映画ばかりでした。楽しい映画といえば「嗚呼!花の応援団 役者やのォー」「ダイナマイトどんどん」みたいのばかり。

神田川」の中で主人公の女子大生が中絶するシーンがあるのですが、画面いっぱいに紅い血しぶきが八つ墓村ばりに飛び散るシーン(どんな中絶手術だ)を当時小学校低学年の僕は「なんだなんだ何が起こったんだ?」と思ったのをよく覚えています。「サード」では少年刑務所で受刑者たちが夜な夜なベッドでしこしこやっているのを観て「?????」と思ったものです。他にもいろいろ。当時はPG12とかなかったからなー。でも小学校低学年が観る映画じゃないよな。

当時は高田馬場パール座(今のライブハウスAREA)やら早稲田松竹(これはまだ健在の名画座)、東映パラス(今は居酒屋)など地元付近にたくさんの映画館があり、本当によく連れて行ってもらいました。まあ遊園地いくより安いしね。

その中でも特によく行っていたのは文太兄ィのご存知「トラック野郎」シリーズ。でもこれも毎回毎回文太兄ィがトルコ風呂でハッスルハッスルするシーンがお約束だったりしますし、この前久しぶりに観た作品では山城新伍がダッチワイフを抱えながらデコトラを運転していました。うーんやはり小学生が観るものではないような。

やはりこういった映画たちというのはものすごく人格形成に影響していると思うのであります。今でもトラック大好きだし。そう考えるとうちの小中学生ガールズが「アナ雪」やら「妖怪ウオッチ」しか観ないのはきっといいことなんでしょう。うーん「『冷たい熱帯魚』良かったよねー」という小学生よりはいいか。


僕は未だ「アナ雪」を観ていないのですが、例えば当時の僕ならアナ雪ストーリーをこう想像していたでしょう。

閉ざされた氷の国に二人の姉妹。姉は氷を操る魔力があったがその力を人々は恐れおののき、魔女狩りを恐れた妹は姉の力を封印し、ふたり山奥でひっそりと暮らしていた。
やがて街を襲う異常気象。強烈な寒波は全てを凍りつかせ、人々は一人またひとりと凍え死んでいく。妹は姉に今こそ魔力を使うべきだと伝えるが、その魔力ゆえ人々から化け物扱いされ虐げられてきた姉は決して首を縦に振らなかった。しかし寒波はさらに強大なものとなり、愛する妹までもが凍死寸前となった。妹を救うべく姉はその魔力の封印を解く。妹は救われ、街も甚大な被害はあったものの壊滅は免れた。
やがて季節がめぐり、また氷の国が冬を迎えようとした頃、惨劇の再現を恐れた人々は「あの姉妹こそが寒波を招いたのだ」と姉妹を追い立てる。妹は「姉こそがこの街を救ったのだ」と伝えるが人々は耳を貸さず、笛吹きの旅人に踊らされた若い村人がついには妹を殺めてしまう。嘆き怒り苦しんだ姉はその力を解放し町中を氷の世界と変えてしまう。そして自らが女王となり、思うままありのままにこの世界を統べると宣言する。
やがて時は過ぎ、民衆は立ち上がりついに女王を倒す。妹の亡骸とともに氷に深く閉ざされた魔女の表情は安堵とも言える穏やかなものであるという・・・

・・・うーんオチがちょっとな。まあいいか。だいたいこういうお話でしょ?伝え聞くところによると。


何が書きたかったかというとそんな通いなれた新宿ミラノ座が閉館するのでさよなら興行を観に行きましたってお話です。つらいとき苦しいとき悲しいとき、いつもその暗闇で若かりし僕を包んでくれた映画館がまたひとつ姿を消します。ほんとうに寂しい。寂しいというお話でした。


GachifloZ