綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

恐怖の毒ガス人間


繁華街のはずれに住んでいることもあって人とすれ違うことが多いんです。でもいつもこう、誰かとすれ違う度にウエスタン・ラリアートをかまされるのではと思ってしまいます。しかも本家本元のやつ。不思議なことにアックス・ボンバーが来ると思うことはまずないのですが、すれ違うのがケリー・フォン・エリックあたりだと思うと少し切なくなります。

だから僕は街に出るのが怖くて仕方ありません。「どこか」には行きたいのですが、「どこも」通過したくはないのです。モンサンミッシェルもサグラダ・ファミリア
も視力があるうちにナマで観たいとは思うのですが、パスポートを池袋のサンシャイン60まで取りにいくのが面倒で仕方ないのです。言葉の問題とかは考えたことがありません。なぜなら日本に居てすら他人と会話をしないからです。道に迷っても人に尋ねたことはありませんし(つーか迷ったことが無いんですけども)。幼少時から歌舞伎町の裏道で走り回っていればそれなりに危険に対する鼻も効きますしね。でもそれでもやっぱりボブチャンチンのごとく死角から突然襲ってくるロシアン・フックは避けられやしませんから、僕はいつもビクビクしながら歩いているのです。


昔カミさんを実家に送って一人で家に車で帰る途中に後ろから激しくオカマを掘られた事があります。その時僕は右折の信号待ちで、後でわかったことですが相手は酔っ払い運転の上によそ見か居眠りをしていたため減速抜きで僕の車に突っ込んできました。もうすぐ信号が青に変わるところだったので僕は右足をブレーキに載せていて、ぶつかった衝撃で更にブレーキを踏むみこむ形のままハンドルを切っていた右方向へぶっ飛んで行きました。反対車線を越え、歩道に乗り上げ、その向こうにある電車の線路に突っ込む直前で車は止まりました。
もしあの時に対向車がいたら。もし歩道に歩行者がいたら。あと1m進んで線路内に操作不能のまま入ってそこに電車が来ていたら。
何れにせよラリアートどころではなかったでしょう。・・・いや、全盛期のスタン・ハンセンのラリアートならそれくらいの威力はあったかもしれませんね。


まああれを思えば例えすれ違う人全てが次々と襲いかかってきてもどーということはない。そう思っています。いやむしろ迫り来る腕をサッとかいくぐり、相手の背後に回って神様ゴッチ仕込みのジャーマン、もしくはその愛弟子「関節の鬼」藤原喜明直伝の脇固めでキリキリ肩関節を破壊してやりますよ。だてに「藤原喜明のスーパー・テクニック」初版本を読んでませんよ。僕の頭の中だけならウイリー・ウイリアムスにだって負けませんよ!
街を歩く時はいつもアップル純正の新型イヤフォンEarPodsをぎゅうぎゅう耳に詰め込んでいます。自分の妄想が外に漏れてしまわないように。自分への罵詈雑言が聞こえてこないように。他人の幸せそうな会話が聞こえてこないように。他人の哀しみや妬み、そねりが入り込まないように。

どうしてみんな他人と話せるのかな。
尊敬しちゃう。

GachifloZ
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