綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

ショッキングブルービーナス


「だってあの人は精神障害でしょ。とっとと何処かに収容しちゃえばいいんだよ。」
僕は今、知的障害を持つ方々を支援する組織でお手伝いをしているのですが、「そこで支援を受けている方のご家族」がこの前ボソッと言った一言です。僕は「あ、はあ、うーん…」と誤魔化しました。僕は「なんでそんな事が言えるんだろ」とちょっと不思議に思いました。この人たちだってずいぶん差別に苦しんできたろうに。


僕は今の知的障害者施設の前は高齢者の施設にいて、そこの法人は精神障害の施設も運営していたので各障害についてはある程度の知識があるほうだと思っています。重度身心障害の方とも認知症の方とも統合失調症の方とも躁うつの方ともたくさんお話しして来ました。ちなみにメインでお手伝いしていた高齢者施設のほうはほとんどが重度認知症の方で、ずいぶん長いこと働いていましたが最後まで名前は覚えてもらえませんでした(あ、存在そのものをか)。まあそれはどうでもいいんですけど。


あるおばあちゃんが亡くなった時、その人ととても中の良かったおばあちゃん(お二人とも認知症)がお葬式の席で故人の死化粧を見て「まああなた、今日はずいぶん綺麗よ。良かったわね」と終始ニコニコしていたのをよく覚えています。お葬式でニコニコニコニコしているのに誰も不謹慎だなんて言い出しませんでした。


今の施設を利用している知的障害の方のお母さんが亡くなった時、その方は「あのね、死んじゃった!お母さん死んじゃったの!」と僕に繰り返し教えて下さいました。顔を合わせるたびに何度も何度も教えて下さいました。そのたび僕は「そうでしたか。うんうん、そうでしたか。」と繰り返し答えました。三日もすると彼はもうその事について何も言わなくなりました。


カミさんがある夜突然ぶっ倒れて重度の身体障害者になった時、それまでいちおう敬語で彼女に接していたナースがことごとく「〜なの?」とか「〜してね」と一気にタメ語を通り越して保育園児に接するような言葉遣いになった時の事も忘れません。確かに何かを喋ろうとすればヨダレがダラー、お箸はおろかスプーンも持てない、もちろんおトイレも行けませんけど大人なんですけど頭はクリアなんですけどなんなんだこの扱いは!


昔同僚だったあるヘルパーさんに「今は知的の施設にいるんだよ」と言ったら「勝手が違って大変でしょう」と言われたので「いやあ、認知症も知的も精神も変わんねえよ」と言ったら「ぜんっぜん違いますよ!勉強しなおしてくださいヨ!」と笑われました。僕は素直に謝ったのですが、やっぱあの時「変わんねえよ!認知症も知的も、身体だって精神だって、俺もオマエもあそこのかわい子ちゃんも、ぜ〜んぶおんなじだよ。」と言い返せばよかった。


ずいぶん寒くなってきました。
みなさんお身体お大事に。

国会図書館に行こうと思ったら国立国際子ども図書館へ行ってしまい、おまけに休館日でした。
今日も生きててごめんなさい。
でも良い日でした。ありがとう。

GachifloZ
oooxxx