綾鷹カワウソ妄想譚

一生涯の愛をこめて

GachifloZさん秋の一大事2012


好きなお弁当は「イカフライおかか弁当」です。これを超えるお弁当にはいまだ巡りあっていません。強いて言うなら「あさりの味わい御飯」なんですが、これ単体だとさすがにちょっとお腹が空いてしまいます。・・・えっ、コンビニ弁当の話題じゃないの?

僕は中学高校とお弁当だったのですが、母親の作るお弁当は来る日も来る日もとんかつ弁当でした。アルマイトの弁当箱に米をぎっしり敷き詰め、その上にとんかつが一枚ドーンと置いてあってとんかつソースがぶわっとかけてあるだけ。春夏秋冬ずっとこれでした。栄養バランスもへったくれもありませんが、美味しかったな。「美味しいから毎日これにしてよ」って言ったら本当に毎日作ってんの。リアルに毎日。まあ自分から言い出したことだから良いけどさ。それに母親にしてみれば楽だったろうと思います。献立考えなくていいんだから。
で、その反動なのか、自分が子供にお弁当を作る立場になったらやたら凝りまくるようになっていました。いわゆるキャラ弁というヤツです(まあ保育園児の弁当がとんかつドーンだったらそれはそれでどうなの?って感じですが)。
そのガールズも小学生になってキャラ弁への「うわあ、すごい!パパちゃん天才!みんなに自慢しちゃおう!」みたいな反応も薄れてきましたので、最近はキャラ作りを封印していわゆる一般的な普通のご家庭のごとく前夜の残り物+冷凍食品でこさえています。

って、そんなことはどうでもいいんです。
一大事が起こったんです!大変なんです!

今朝早く家を出て通勤のため駅に向かう道すがら、僕がいつものように「100万円落ちてないかなー」「綺麗なお姉さん落ちてないかなー落ちてたらいいのになー」とうつむいてブツブツ言いながら歩いていたところ、僕の前を20代半ばくらいのOLさんと思しき女性が歩いていました。
僕は前を行くお姉さんのお尻を凝視しながら、「ああ、このお姉さんがいきなり振り向いて『うっふ〜ん、好きにしていいのよ〜ン』みたいな事を言わないかなー」と思いつつも、「そういえば『うっふ〜ん』という言葉を実際に口にする女性にお目にかかったことがないなー。マンガ以外で『うっふ〜ん』という女性は存在するのかなー」と考えていました。
そのお姉さんはえんじ色のスカートを履いていたのですが、そのスカートというのが変わったデザインで、ちょうどお尻のペタというかズボンでいうところの後ろポケット部分に白いワンポイントが入っているのです。ワンポイントと言っても白だけでなくスカートの地色と同じえんじ色がところどころ挿し色として使われていて、風変わりなデザインでした。
まあとどのつまり僕はそのデザインを目で追う振りをしてお尻を凝視していたのですが、お姉さんとの距離が近づくと、どうも何か違和感を感じはじめました。

既にオチが読めていると思いますので先に書いてしまいますが、それはトイレットペーパーでした。トイレットペーパーがスカートの上のほうからはみ出して、おそらくはその状態でしばらく椅子に座っていたのでしょう、まるでワッペンのようにスカートにぺったりくっついていたんです。しかもところどころに血のあとがあったんです。

僕は悩みました。
「うーぬ、これは声を掛けて教えてあげるべきか。それとも見てみぬ振りをするべきか。ただゴミが付いているならまだしも、付いているものが付いているものだけにこんなオッサンからそれを指摘されたら彼女はビルの13階から飛び降りてしまうのではないか。そうしたら俺は殺人教唆か?いわば殺人遊戯か?俺は松田優作なのか?
かと言ってこの状態のまま朝の山手線に乗るのはあまりにかわいそうだ。人通りのまだあまりないこの道を歩いているうちに教えてあげるべきじゃないのか。それが紳士ってもんなんじゃないのか。俺が紳士とはとても思えんが。
しかしアレはやっぱりトイレットペーパーだよなあ、それもあの汚れはやっぱりチョコじゃないよなあ・・・ここはできれば僕以外、それも女性が誰か教えてあげるのが一番平和的だよなあ。そうすれば彼女の元気なブロークンハートっぷりも最小限で済むような気がするな。誰か、早く気付いてあげて!それもできればお姉さんが気付いてあげて!そしてやさしくそっと教えてあげて!誰か!誰か!」

僕が「知らねーヨ」「カンケーねえし」と彼女を追い越していくのは簡単なのですが、そこはほら小心者ですからあとあと落ち込むのが目に見えているわけです。ましてや今ちょっといろいろありまして、日々善行を重ねていくべき状態なもんですから、このまま素通りしたら一生後悔の念に襲われ、いつも以上の悪夢を連日連夜見てしまうことウケアイです。しかしなんでよりによって俺に気付かせる?ナンパはおろか、見知らぬ人と会話をすること自体出来ない対人恐怖症の俺になぜ気付かせる?生きるカウンターカルチャー、生きるトリプルクロスカウンターたるこの性格としては「誰もやらぬならこの俺が!」と頑張っちゃうじゃないか!

道行くお姉さんのおしりを凝視しながら念仏のようにブツブツなにやら唱えている僕はさぞや変態さんのように思われていたことでしょう。そんな僕がさんざん悩んでいる間に数人のお姉さんが彼女を追い越していきましたが、使用済みトイレットペーパーがスカートに圧縮されてあたかも流行のワンポイントデザインであるかのようなくっつき方をしているために誰一人としてそれに気が付きません。もしかすると気が付いた人だっていたかもしれませんが、少なくとも声を掛ける人は誰もいませんでした。

ううむ、あと100mで大通りに出てしまう。ううむ、あと70m!ううむ!どうする!オレよ!

僕は一生分の勇気を出してお姉さんのうしろからそっと近づき、彼女に話し掛けました。
「あの・・・お尻・・・なんか・・・付いてますよ・・・」
お姉さんはギョッとして僕を一瞥し、すぐさまお尻を振り返っていました。僕はもう彼女を見ていられず、奥歯に仕込んでもいない加速装置のスイッチを入れて、まるで西田敏行演ずるサンキュー先生ばりの競歩で駅へ向いました。

彼女からすれば、見知らぬオッサンに朝も早よからナンパされ、しかもそのセリフが「ぐえっへっへ!お姉ちゃん、オケツにチリ紙ついてんねんで!それも血まみれのやで!ホンマえげつないのぉ〜!ウワッハッハ!」と聞こえたに違いありません。そして警察に被害届を出すに違いありません。今頃あの道は刑事が大挙して張り込みをしているはずです。僕は数時間後にあの道を通りますが、おそらくはその時点で逮捕され、あのお姉さんから「この人!この人です!この人が変態ストーカーですぅぅぅ!」と涙ながらに訴えられるに違いありません。刑事は当然女性の味方。僕は何日も拘留されるに違いないのです。おうちの事をやらなきゃいけないのに!どうしよう!どうしたらいいんでしょうか僕はッ!!

みなさんも気をつけなはれや!

GachifloZ
oooooxxxxx


今週のお題「好きなお弁当のおかず」